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AI研修 — 第2回

AIを安全に、
日常にする

事故らない設定と、毎日の任せ方の話をします。
この資料では朱色を「危険・NG」の印として使います。

① 締めるツールの設定と危険
② 線を引く入れていい情報・任せていい仕事
③ 持ち帰る任せ方の型を10個

設定情報の確認日:2026年8月(AIツールの仕様は動きが速いので、日付のない資料は信じない)

DEMO — つかみ2本

まず見てください。

スライドはここで止めて、ここからはライブでやります。
2本とも、毎日の業務にある作業から選びました。

この2本は、あとで「任せ方の型」として全文を配ります。

DEMO 1 / 2 — 障害調査の初動(=型02)
① チャットに貼って聞く このエラーログを見て、原因の仮説を3つ
それぞれ確認手順つきで。断定はしないで。
② エージェントに確認まで任せる 同じ調査を、ログと取込データを読んで確認まで進めて。
結論と、根拠(実際に見た行)を報告して。

ポイント:①は確認を自分の手でやる。②は確認まで任せて、報告の根拠を自分で検証する。この差が後半の「任せる線」につながります

DEMO 2 / 2 — 議事録 → チケット(=型01の実例)
こう頼む この打ち合わせメモを
決定事項/TODO/担当/期限に整理して。

ポイント:完成形(出力の形式)を先に指定する。コードを書かない業務でも同じ形で使える

WHY — なぜ最初に「設定」の話か

便利かどうかの前に、
使っていいかを確認する。

うちらは客先常駐で、お客さんの情報を扱っている。

客先の情報を無断でAIに入れる事故は、
個人のキャリア会社の信用を同時に壊す。

逆に、

ルールを説明できる人は、客先で
「AI使わせてください」を通せる人になる。

→ この話は第3回「単価の話」に続く。もう毎日AIを使っている人は、今日は使い方ではなくここを持ち帰ってください。

LENS — どのツールでも見るのはこの3点

設定画面は変わる。
見方は変わらない。

1. 学習
入力したデータがモデルの学習に使われるか。オフにできるか。
2. 履歴
会話や入力がどこに・どれだけ残るか。消せるか。
3. 管理
個人アカウントか、組織の管理下か。誰が設定を握っているか。

これから見せる各ツールの設定は2026年8月に確認した。UIは変わるので、この3点で自力で追えるようになるのが今日のゴールです。

確認 2026.08
SETTINGS 1/2 — チャット系

個人アカウントは、
「学習オン」から始まる

ChatGPT 「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ(既定はオン)。履歴の保存と学習は別の仕組み — 履歴を消しても学習設定は別で切る 設定 → データコントロール → モデルを改善する: オフ
Claude 個人プラン(Free/Pro/Max)は2025年の規約変更で既定が学習オンに — 自分でオフにしない限り、そのアカウントで使うClaude Codeの分も使われる。オンだと保持最大5年/オフなら30日 設定 → プライバシー → モデル改善への利用: オフ
共通 法人プラン(Team / Enterprise)とAPIは既定で学習に使われない建て付け。「会社契約の枠で使う」が最強の設定
確認 2026.08
SETTINGS 2/2 — 開発ツール系

コードを書く道具ほど、
コードを送っている

GitHub Copilot 公開コードと一致する提案をBlockに(ライセンス事故防止)。個人プランで客先コードはNDA違反リスク — データ収集の既定に注意。法人版はプロンプト非保持+組織で一括強制できる Settings → Copilot → Suggestions matching public code: Blocked
Cursor Privacy ModeをEnabledに(個人の既定は共有側。チーム契約なら強制オン)。自分のAPIキーを挿しても通信はCursorのサーバー経由 Cursor Settings → Privacy Mode: Enabled
その他 ここにないツールは、さっきの3点(学習・履歴・管理)で自分で確認してから使う
確認 2026.08
2026 — エージェント時代の新しい危険

AIが「読む」だけでなく
「動く」ようになった

Claude CodeのようなエージェントはファイルもコマンドもWebも触れる。そこで生まれた攻撃がプロンプトインジェクション — 読ませた文書やWebページに仕込まれた指示で、エージェントが乗っ取られる。

機密に触れるコードや顧客情報にアクセスできる
×
外部の文書を読むWeb・メール・他人のREADME
×
外に送信できるネット接続・コマンド実行

3つ揃ったら攻撃可能、と覚える。対策:①自動承認で走らせるなら隔離した環境で — 本番の鍵と本番への接続は渡さない ②拡張・連携(MCP)は提供元を確認してから足す ③ログは全部読まなくていい。差分・外部通信・実行コマンドの3つを見る。

確認 2026.08
TRAPS — 見落としがちな落とし穴

チャット画面の外にも、
送信経路がある

見分け方はさっきの3点(学習・履歴・管理)と同じ。客先同席の会議では、文字起こしの扱いを先に確認する。

LINE 1/2 — 何を入れていいか

設定が完璧でも、
入れちゃダメなものはダメ。

絶対NG
  • 顧客の個人情報
  • 認証情報・鍵
  • 客先の未公開コード(許可なし)
  • 契約で秘密指定の情報
グレー → 確認
  • 社内文書の要約
  • 客先固有の用語を含む質問
基本OK
  • 一般的な技術質問
  • 公開情報
  • 自分で書いたサンプル
TECHNIQUE — 使える場面を増やす

実データは、
置き換えてから渡す。

user_id=12345  →  user_id=<ID>
株式会社◯◯  →  A社
実データのSQL  →  同じ構造のダミー

聞きたいのは構造の話で、中身の値ではないことが多い。
置換してから聞けば、聞ける場面が増える。

適用範囲に注意:これはチャットに貼る場面の技術です。エディタやエージェントにリポジトリを直接読ませる場面では置換は効かない — そちらは「許可を取る」「読ませる範囲を絞る」で守る。社名を伏せても、構造から案件が分かることはある。

RULE — 客先ルールが不明なとき

不明は、禁止として扱う。
そして、確認する。

確認テンプレ(そのまま使っていい) 「業務でAIツールの利用可否と条件を確認したいのですが、
規程はありますか?」

聞くこと自体が「安全意識のある人」という評価になる。損しない。

MAP — 任せ方の型 10個

今日はこの10個を見せる。
暗記は不要、全文を配ります。

01基本形(文脈と完成形)*
02エラー調査*
03コードレビュー依頼
04知らないコードの理解
05テストケース生成
06ドキュメント下書き
07トーン変換
08逆質問させる*
09比較表*
10チートシート化

太字=今日ライブで見せる型(01・02は冒頭の実演)。* = 客先の情報をほぼ入れずに使える型。制約が厳しい現場は、まずここから試す。

この10個は毎回手で打つものではなく、慣れたら指示ファイル(CLAUDE.md など)や定型コマンドに書いて固定するものです。もう毎日使っている人は固定まで進んでください。やり方は第3回で扱います。

型 07 / 10 — トーン変換

技術メモを、
客先向けの報告文に直させる。

こう頼む この技術メモを、客先向けの報告文に書き直して。
事実は変えないで。

ポイント:「事実は変えない」を付けないと、表現と一緒に内容まで変わることがある。確認なしで送るのはNG

型 08 / 10 — 逆質問させる情報を入れずに使える

作る前に、
質問させる。

こう頼む 作る前に、この依頼で曖昧な点を先に質問して

ポイント:着手前に曖昧な箇所が判明するので、手戻りが減る。先に計画を出して止まるモード(Claude Codeの計画モード等)を持つツールもある — 無いツール・聞いてこない場面で、この一言を足す

型 09 / 10 — 比較表情報を入れずに使える

結論は聞かない。
材料だけもらう。

こう頼む AとBを、うちの条件で比較表にして。
条件:【運用体制・コスト・学習曲線…と列挙】

ポイント:条件を自分で列挙するほど比較の精度が上がる。採否の判断まで任せるのはNG

LINE 2/2 — 何を任せていいか

作業の名前ではなく、
確かめられるかで分ける。

任せてよい
  • 正しさを機械で確かめられる(テスト・実行・元データとの突合)
  • 間違えても差分を捨てれば戻せる
  • 例:下書き・変換・調査の初動。テストが効く範囲なら実装も
任せてはいけない
  • 正しさを確かめる手段が自分の記憶しかない
  • 出したら取り消せない(送信・本番反映・対外報告)
  • 最終判断と、責任の所在が問われるもの

同じ「要約」でも、元文書と突合できなければ任せてはいけない側に入る。作業名で覚えず、この2つの問い(確かめられるか・戻せるか)で毎回引き直す。

RULE — 扱い方の基準

AIの出力は、
「優秀な新人の下書き」として扱う。

例 — 設定の場所を聞いたら Q. ChatGPTの学習オフ設定はどこ?
A. 「設定 → セキュリティ → 学習データの管理」からオフにできます
→ そのメニューは存在しない(正しくは「データコントロール」。UIの変化に知識が追いつかないまま、それらしく穴埋めして断定する)

新人とひとつ違うのは、分からないときに黙らず断定してくること(上の例)。コードの間違いはLinterや実行がある程度拾ってくれる。ただしテストが緑=正しい、ではない — AIがテストの方を要求に合わせて書き換えることがあるので、緑になった経緯は差分で確認する。道具が拾えないのは事実・仕様・文章の誤りで、これが断定調で返ってくる(ハルシネーション)。だから確認なしの納品は「任せてはいけない」側。確認して、直して、出す。「AIがやったから」は免責にならない

Q&A + 持ち込み相談

質問はなんでも受ける。
相談は、その場で一緒に試す。

「現場のこの作業、AIでどうにかならない?」がある人は手を挙げてください。
いま一緒にやってみます。答えきれない分は次回の持ち込み枠に回します。

確認 2026.08
NEXT — 今日の先にあるもの

今日の内容だけでは、
開発はまだ速くならない。

今日やったのは「事故らない」と「手元の作業が楽になる」まで。個人が楽になっても、チームの速度はレビューと検証で決まる。しかも体感は当てにならない — 2025年の実測研究(METR)では、熟練開発者はAIを使うと実測で19%遅くなったのに、本人たちは20%速くなったと感じていた。

成果につなげる順番は、①計測する(かかった時間のメモはこのため)、②効いた型だけ残して固定する③任せる範囲を広げる。この設計を第3回でやります。

METR RCT(2025-07・arXiv:2507.09089):熟練OSS開発者16名・246タスクの無作為化比較。条件つきの結果だが、「体感と実測はズレる」ことの根拠になる。

NEXT — 次回に向けて

宿題はありません。

これから使う人は、試したくなったら

型を1つ選んで、業務で試す。
メモはかかった時間の変化だけで十分です。

もう毎日使っている人は

常駐先のAI利用ルールを1つ確認する。さっきのテンプレがそのまま使えます。
次の一歩は「使う側」から「ルールを通す側」へ — 材料は第3回で扱います。

やるかは自由です。次回は手ぶらでOK。困りごとを1個持ってくれば、持ち込み相談枠でその場で一緒にやります。試した人がいたら、聞かせてください。
次回:AIに「仕事の塊」を任せる回(エージェントの使い方と、客先で承認を取る話)。配布:設定チェックリスト(2026.08版)/NG・グレー・OK早見表/客先確認テンプレ/任せ方の型・全文集/任せる・任せないの判断表

確認 2026.08
APPENDIX — この先を自習する人へ

無料で学べる公式教材、4つ。

Anthropic Academy Claude Code・MCPの公式コース。無料の修了証が出る。実習はClaudeアカウントが前提 anthropic.skilljar.com
GitHub Skills Copilot公式ハンズオン。ブラウザで完結、提出すると自動採点。一部の演習は有料プランが前提 learn.github.com/skills
Microsoft Learn Copilotの学習パス。日本語あり・約8.7時間・無料の公式模擬試験つき learn.microsoft.com/training/paths/copilot
freeCodeCamp 「OpenAI Codex Essentials」。登録不要のYouTube動画コース・約5時間 freecodecamp.org/news/openai-codex-essentials…

この4つは、さらに先へ進みたい人向けです。URLは配布版のこのページから開けます。

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